ライカⅢf後編

 

ライカⅢf

 

紫白 症状

2000年に購入した時からフラッシュが点灯しなかった。それが正常なのかと思っていたが、そうでも無いらしい。

 

 

紫白 推定原因

X接点への配線の断線

 

 

 

修理記録後編 (2014年3月)・・・長期戦を戦いましたので修理記録は4部構成にします。
 1.軍艦部カバーの取り外し (こちら→)
 2.スローガバナー清掃と再組み付け (こちら→)
 3.「フラッシュ点灯セズ」の原因と修理 (こちら→)
 4.軍艦部カバーの再組み付け (こちら→)

今回の修理に際してビスを無くしてしまいましたが、幸いにも「ライカショップくらもち」さん(こちら→) から購入する事ができました。感謝!!

 

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2.スローガバナー清掃と再組み付け

 

手順

27.
分解した以上はフラッシュ点灯セズ問題以外にもお掃除しておきましょう、と言う訳でスローガバナまで分解します。
まず前板を外しますが、スローダイヤルも外れるのでしょうか。

 

手順

28.
ダイヤル外しの定石として、先端部のイモねじを外し、先端部を取り去りましたが、これから先は取り外せそうにありません。
あきらめて前板の固定ビス外しに移ります。

 

手順

29.
5本のビスを外します。赤丸で囲んだ2本は短いビスです。
この5本を外しても、まだ前板は外れません。

 

手順

30.
さらにマウントリングの座にねじ込んである4本のビスも外します。
これらのビスは、内蔵物(遮光版など)を固定しています。

 

手順

31.
これで前板が外れます。写真の様に、スローダイヤルは前板に付いたままで、一緒に外れます。

 

手順

こちらは、前板を外した後の本体機構部です。
底の方にスローガバナが固定されています。

 

手順

32.
スローガバナを外すために、底板を外します。

 

手順

底板を外した後の本体機構部です。
何本かのビスの頭が見えますが、スローガバナユニットを固定しているのは2本です。

 

手順

33.
写真中AとCのビスがスローガバナを固定してます。AとCを比べると、Aの方がわずかに短いようです。
尚、ビスBを外すと、シャッター幕回転止めの爪の動きを悪くします。不要なビス外しはしないようにしましょう。

 

フィルムを巻き上げると同時にシャッター幕をチャージします。この時底板に配置されているカムも回転し、巻き上げ完了時には、このカムは爪レバーにかかって停止します。その後シャッターボタンを押すと、押した力でカム爪が外れチャージが解放されて幕が走る、と言うのがバルナックライカの仕組みです。
そして、ビスBは、シャッターボタンを押した力をカム爪に伝える為の板バネを固定する役割を持っています。
従ってビスBをいい加減に固定して板バネの位置がずれると、爪が外れません。

 

手順

 
34.
外したスローガバナです。
スプリングの足が2か所出ています。

 

手順

35.
スローガバナを取り去った後の、本体です。シャッター幕の前に鎮座しているのは、スローガバナを覆っていた遮光版(作業のために跳ね上げた)です。

 

手順

36.
外したスローガバナは、潤滑油で動きをスムーズにした後、何回かのベンジンじゃぶ漬けを行い、本体へ再組み付けします。

 

手順

37.
再組立てにあたっては、まず、スローガバナー内でスプリング足を正しい位置に掛けなくてはなりません。
黄色丸で囲んだのが、正しい掛け位置で、正しく掛けるとバネ力は強く伝わり、又、外れにくくなります。

 

手順

38.
機構部下の方に、スローガバナーを固定しました。
 写真の左側の方で、軍艦部から底板まで軸が1本通っているのが、わかります。この軸は、上には爪が固定されており、下にはスローガバナー上のピンと連結するアームが固定されています。

 

手順

軸の上部(軍艦部の中)に注目します。シャッター速度ダイヤルと先幕回転止め爪、後幕回転止め爪は、シャッター幕ドラムと同軸になっています。その内の後幕回転止め爪の回転を受け止めて止めるのが、今回の軸上部に固定されている爪です。  
 写真中、左がスローダイヤル「1」、右がスローダイヤル「30」の時の爪の状態です。スローダイヤル「10」でも写真左の状態になります。これは、スローダイヤルの裏で、今回の軸を押さえている突起の高さが、ダイヤル位置によって変化し、軸の押し込み量イコール上先端の爪位置を変えてからです。  
 爪はダイヤルが「30」の時一番浅く、「1」、「T」、「10」の時に深くなります。

 

手順

この軸の下側にはアームが付いていますが、このアームの先端は右の写真中で黄色で描いたような形状をしており、スローガバナーのチャージギアに固定されているピンと結合します。  
 チャージ時のアームの位置は、軸すなわちスローダイヤルの位置によって変化します。ダイヤルが「30」の時一番定位置に近く、、「1」、「T」、「10」の時に離れます。

 

ここで、この軸の上と下での動きを整理しておきます。
シャッターを押す→先幕移動→ドラム引っ張られて回転→後幕回転止め爪も回転→軸上部先端爪に当たる→軸下部アームでスローガバナーをチャージ→タイマースタート→軸下部のアームが定位置に向かう→軸上部の爪がドラム軸から徐々に逃げる→やがて軸上部で爪同士が外れる→後幕移動

 

手順

39.
写真は前板を裏から見ています。薄い板金のレバーが付いており、これはスローダイヤル位置を、スローガバナに伝える役目をするもう一つのレバーです。
スローダイヤルが「T」、「1」ー「4」の時はガバナーが低速で、「30」ー「10」の時はガバナーが高速で動く様に、このレバの位置が変化します。

 

手順

こちらが、そのレバーの相手になる、スローガバナから出ているレバーです。
これらの2つのレバーがお互い引っ掛かる様に、前板を組み付けなくてはなりません。

 

手順

右の写真は、スローガバナーを上から見ています。
 写真の中で横に這っている黒いものは、速度高低切り替え用レバーです。自然状態では、写真中のバネ力の働きによってこのレバーは右側になっており、ガバナーは低速です。
 また、このレバーを左側に引っ張った状態では、スローガバナーは高速になります。
 この高速度と低速度を切り替えているが、前板裏に設けてある、スローダイヤルの位置と連動したレバーです。

 

手順

2つのレバーの結合状態をのぞき穴から見ておきます。
写真左がダイヤル「30」ー「10」で、右が「1」ー「4」です。

 

手順

40.
回転して来た後幕回転止め爪が軸上部先端爪に当たっている写真です。
後幕回転止め爪は高速で赤矢印の方向に回転して来て軸上部先端爪に当たって止まります。その後軸上部先端爪はスローガバナーの動きにしたがって黄色の矢印の様に動き、最終的には後幕回転止め爪から外れます。

この当りの部分を始め、円滑な滑り、回転、動きが必要な場所に潤滑油をさし、シャッター速度毎に動作の確認をします。
正常な動きを確認し、次は本題の「フラッシュ点灯セズ」の修理です。

 

3.「フラッシュ点灯セズ」の原因と修理

 

手順

41.
軍艦部カバーです。シュー取り付け部分の窓にリード線の先端が覗いています。
又、シャッター速度ダイヤルを外した後には、ストロボ同調ダイヤルが付いており、このダイヤルには導電体のリングがはめこまれています。

 

手順

シュー取り付け部分の窓を拡大しました。

 

手順

裏から見ると、リード線はX接点から出ています。又、ストロボ同調ダイヤルにはめこまれた金属リングは裏まで貫通しています。
 
 
テスターで電気抵抗を確認した結果・・・
  X接点とリード線先端は導通
  X接点とカバーは非導通
  カバーと金属リングは導通
  金属リング横の紙?は絶縁物

 

手順

42.
フラッシュ点灯させて、導通状態の裏を取ります。
X接点にフラッシュ付属の電線を差し込み、リード線先端からクリップで延長させたテスト端子をカバー、金属リング、と順番に触っていきます。
 
  カバー触ったら、フラッシュ点灯
  金属リング触ったら、フラッシュ点灯
  金属リング横の紙?に触っても、フラッシュは反応しない

 

手順

43.
本体側に目をやります。
軍艦部カバーと電気的に関連がありそうなのは、緑の丸で囲んだ端子と赤い丸で囲んだ端子です。この2つの接点間の抵抗値を測定してみると、完全な絶縁状態でした。
次に、黄色い矢印で指し示したレバーがシャッターボタンと連動して上下します。緑の丸で囲んだ端子と赤い丸で囲んだ端子間の抵抗値を測定している状態でこのレバーを上下して見ました。
結果としては、レバーを下げた時には、2つの端子間は導通状態になりました。このレバーの下にX接点用接触点がある事になります。

 

手順

この写真の様にシャッターボタンを押した時に、レバーも押し下げられて、端子間が導通状態になります。

 

手順

フラッシュを接続して裏付けを取ります。
  
写真の様に接続しておいて、シャッターボタンを押します。
  フラッシュの付属電線をカバーX接点に差す
  カバーと本体赤い丸で囲んだ端子を
    ジャンパー線でつなぐ(黄色)
  カバーX接点からのリード線を
    本体緑の丸で囲んだ端子につなぐ
  
フラッシュが点灯すれば、結果はOKです。

 

手順

ここまでの確認結果を絵にしました。

 

手順

44.
単体レベルでの確認は終わりましたので、軍艦部カバーを本体に再組み付けします。

 

45.
再組み付け後のシュー取り付け部窓です。
向こう側から頭を出しているのがX接点からのリード線です。本体に彫られた溝を通しています。

 

手順

46.
最終確認です。X接点からのリード線を本体端子緑丸に接続します。この状態でシャッターボタンを押し、フラッシュが点灯する事を確認します。
無事点灯したら、リード線を緑の丸で囲んだ端子にハンダ付けします。

 

手順

つまる所、問題の原因はリード線と端子との間の「断線」だったのです。
最初にそれを見破っていれば、大分解する必要は無く、はんだ付けだけで終わっていました。
教訓:フラッシュが点灯しない場合、まずシューを外しリード線と端子の断線を調べる事。

 

4.軍艦部カバーの再組み付け

 

手順

47.
問題の原因究明ができたので、X接点のリード線をハンダ付けします。ハンダ付けの後は念押しのフラッシュ点灯確認です。

 

手順

48.
シューを再組み付けします。ワッシャの方向を間違わないように・・・

 

手順

49.
巻き戻しノブを再組み付けします。巻き戻しの軸受けには、写真の様に、ピン用の溝が切ってあります。

 

手順

再組み付けする巻き戻しノブの部品です。左側の部品から順に積み上げます。
左端の部品にピンが打ってあるのが見えますが、このピンが軸受けの溝にはまります。

 

手順

巻き戻しノブと巻き戻し軸との結合はリングのビス止めによって行われています。このリングの上下は非対称で、写真の様にビス穴が下側に来る方向で取り付けます。

 

手順

50.
次はファインダーの対物レンズのはめ込みです。

 

手順

向かって右側の丸窓には、周辺にネジが切ってある素通しガラスレンズをねじ込みます。しっかりねじ込んだ後で、飾りリングをねじ込みます

 

手順

左側のレンズの周辺にはネジは切ってありませんので、ゆっくりと押し込みます。このレンズを回転させて、焦点合わせの二重像の上下を調整します。上下位置が一致すれば、飾りリングを取り付ける事ができます。

 

手順

飾りリングは専用工具を使って締め付けますが、写真の様に指サックをしてねじっても相当締めることができます。

 

 

手順

51.
正面の化粧ビスをねじ込みます。このビスの穴は、奥にあるマイナスネジを左右に回して焦点像を左右に動かす為にありますが、今回はその作業は不必要でした。

 

手順

52.
次にアイピースの再組み付けになりますが、ビスを1本を行方不明にしてしまいましたので、とりあえず残りの1本で固定します。
幸いにも、「ライカショップくらもち」さん(こちら→)と言うお店が部品を扱っている様なので、電話でお話しし、ビスを分けてもらう事ができました。 これで愛機も恥ずかしくない姿に戻ります。

 

手順

当面は、ここまで固定しました。

 

手順

53.
シャッター速度ダイヤルを再組み付けします。このダイヤルは、巻き上げてチャージした状態でシャッター速度を設定するものです。
  
右の写真では、シャッター速度ダイヤルはまだ速度設定リングにかぶさっていません。この写真の後の手順としては、速度設定リングを回転させてシャッター速度1/1000で幕が動く位置を探し、その位置で巻き上げチャージアップし、シュー上の矢印がダイヤルの1000を指すがになる様にシャッター速度ダイヤルを固定します。
  
シャッター速度ダイヤルは3本のイモねじで固定されます。

 

手順

速度設定の仕組み・・・
速度設定リングから出ているピンが、左の図の各シャッター速度の穴にはまって、その速度の設定になります。速度の設定を変えるには、速度設定リングを浮かせて、バネ力で穴にはまるまでリングを回転させてやります。

 

手順

54.
底板も固定します。

 

手順

55.
カバーを組み付けます。フィルムの圧着板、板バネ2枚も外れていますので、板バネの方向を間違えない様に注意して、取り付けます。
圧着版の表面にキズを付けるとまずいので、圧着板はテレホンカードで押さえて、そのまま機構部本体をスライド挿入します。
機構部挿入後はビスで固定します。

 

手順

56.
完成です。

 

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