オリンパスOM-1
症状
2011年に手に入れたOM-1。かなりの問題児です。
a.シャッターボタンが降りない
b.メータが動かない
c.ファインダー内の汚れ?が甚大
d.フィルムカウンタが戻らない
e.全体に薄汚い
推定原因
a.巻き上げ~シャッターのトラブルか?
b.電気系トラブル、電池ボックスか?
c.ペンタプリズム周辺の汚れ
d.カウンタ戻しバネのトラブル
e.レンズ、外装の汚れ、モルトの劣化
手入れ記録 (2014年7月)
まず「シャッターが降りない」トラブルについて、巻き上げレバーは軽くねじ上げる事ができますので、スカスカと何回かねいじ上げた所グッと重くなりました。
いかにもフィルムを巻き上げていますよと言う感じの重さです。その後シャッターを押すとしっかりと降りてくれ、正常にシャッター幕が動きました。
どうやら巻き上げ部のバネが緩んでいた様で、その後このトラブルは再発していません。
ここからが修理本番です。
右の写真の様に、ホットシュー部分に大きくヒビが入っています。
幸いこのカメラのホットシューはオプションですし、取り外しが可能です。ファインダー窓上のねじをゆるめて、ホットシューを外します。
ホットシューの跡には白い粉が吹いています。粉の原因はホットシューの樹脂の劣化です。
こちらは、取り外したホットシューです。ポロリと欠け落ちてしまいました。
まずは白い粉をふき取ります。
ファインダーを覗きます。
下の方に黒く汚れが広がっています、又、いたるところに黒い点状の汚れがあります。
1.
電池ボックスの修理
正規の水銀電池MR-9はとっくの昔に販売中止になっていますので、市販のアダプターにLR-44を入れた代替え品でメーターの動きを確認します。
電池を入れて、メータースイッチ(カメラ上部)をONにして見ましたがメーターは動きません。最初に電池ボックスの断線を確認します。
下カバーは4本のビスで固定されています。下カバーを取ると、電池ボックスが見えます。
電池ボックスの接触確認の為に、一度電池ボックスを取ってみることにします。樹脂ビスと金属ビスで固定されており、樹脂ビスは接点板と電池ケースを共締めしています。
2本のビスを外すと何の抵抗感も無く電池ボックスが外れました。りっぱな「断線」です。
本体の方を見てみると、カメラ上部からのリード線が心細げにプラプラしています。
修理として、この後、このリード線を、電池ボックスの接点板にハンダ付けします。
これで電池ボックスの断線修理は終わりです。テスターで導通確認しておきます。
2.
軍艦部を外します
いつもの手順で巻き上げレバーを外します。指サックを使います。巻き上げレバーを外すと、左の写真の様に軍艦部カバー固定用のカニ目ナットが見えますので、これを金属ケガキコンパスで外します。
これが外れた軍艦部カバーです。シャッターボタン、フィルム感度ダイヤルとメータースイッチはカバーに付いたままはずれます。
軍艦部カバーを外す為に外す部品は、左の通りです。
上に並べたのが巻き上げレバーの部品4点(レバー裏のワッシャを含めると5点)、
下の左側が巻き戻しレバーとその裏にある固定ビス2本、右側がホットシュー部でカバーを固定しているカニ目です。
本体側は、こんな感じ。
本体前面左には、この様にただ置いてあるだけのバネがあります。無くさない様に注意が必要です。
このバネの役目は、後ろカバーを閉める時のクリック(ロック)です。
3.
ペンタプリズムの修理
拡大して見ます。
ペンタプリズムは2つの部品で押さえられていますが、その内の一つ、手前側のホットシュー保持金具の下のモルトプレーンがすっかり劣化して粉同然になっています。
ホットシュー保持金具を固定しているビス2本を外します。
バネ力でペンタプリズムを押さえていた部品の片方のビスを外します。ペンタプリズム保護の為に透明樹脂の部品と薄い金属板がかまされています。
こちらが、取り外したペンタプリズムです。劣化したモルトプレーンがこびり付いています。
こびり付いたモルトプレーンの残骸をふき取ります。
その時には腐食した蒸着銅も一緒に取れてしまいます。写真のペンタプリズムの右側(接眼側)の蒸着銅が取れて透明になっているのが判ります。
アルミホイールを貼って、不要な光の入射を防ぎます。
ペンタプリズムを取り除いた本体には、モルトプレーンのカスが積もっています。このカスは本体内部に拡散しない様に気を付けて払い落とし、ブロアーで吹き飛ばした後、アルコールできれいにふき取ります。アルコールは焦点板に触れない様に気を付けます。<
軍艦部全体の清掃が終わりました。
ホットシュー取り付け金具へのリード線は、X接点からの線です。シャッターを切った時にこの線と本体の間の抵抗がゼロになるのを確認します。テスターで確認できます。
4.
メーターの動作確認
メーターと本体の接続は、矢印で指し示したビス穴にビスを締めこむ事で成立します。
又、軍艦部カバーを取った状態ですから、メータースイッチは付いておらず、裸の接点のみが本体に有ります。<
電池を入れて、メータースイッチの接点をオン、オフすると、写真の中で赤丸で囲んだ様に、針が振れます。電池ボックスの修理のみでメータートラブルは片が付いた様です。
この確認後、本体との接続用に締めこんだビスを外してペンタプリズムをはめ込みます。
5.
ペンタプリズムの再装着
ペンタプリズムをはめ込んだら、ファインダーを覗いて異常が無い事を確認し、固定用スプリングをビス止めします。
劣化してしまったモルトプレーンの代替え品を用意します。
正確な形が判りませんので、ホットシュー取り付け金具とペンタプリズムの間で緩衝材として機能するだけの大きさで切ります。
ペンタプリズム回りの修理が完了しました。
6.
軍艦部カバーの清掃
軍艦部カバーの内側にもモルトプレーンがこびり付いていますので、これも綺麗にふき取ります。アルコールで落ちなければ、シンナーを使います。
これが清掃後です。
6.
カウンターの修理
カウンタは巻き上げユニット上に同軸で搭載されています。
巻き上げユニットは2本のビスで本体に固定されています。ビスを外して、巻き上げユニットを外します。
ただし、今回は巻き上げユニットを本体から外さなくても良かったと言う事が、後で判りました。
外した巻き上げユニットです。
簡単に巻き上げ軸部とカウンター部に分かれてしまいます。
カウンター部を上から見ています。中央に見えるCリングでカウンターを押さえています。
「巻き上げユニットを外さなくても今回の修理はできた」と述べた理由は、このCリングさえ外せば良かったからです。
カウンターリセット(戻し)用のバネが左側に見えますが、今回のトラブルの原因は、このバネが効いていませんでした。
カウンター部の構成部品を並べておきます。
左から、ベース、リセット用バネ、カウンタ板、Cリング、です。
バネ端の一方をカウンター板裏の突起に引っ掛け、もう一方を左の写真の矢印で指し示しているベース板の突起に引っ掛けました。作業が大変なので、バネ端はボンドで接着しています。
しかし、このひっかっけ方では、「E」までのカウントアップと「S」までの戻りが両立しません。バネがぎりぎりに設計されている様で、正しい引っ掛け位置を探さないと狙いの動きはしてくれない様です。
次に目を付けたのはカウンター板に隠れた位置でベースに打ちこまれているピンです。カウンター板の突起とぶつかってストッパーの働きをしています。
バネ端をベースに固定していたボンドはハンダゴテで溶かし、この突起に引っ掛けて見ました。
正解でした。
カウンターユニットを本体に再固定します。
8.
焦点板の清掃
ペンタプリズム再装着時に焦点板にゴミが付着した様ですから、清掃します。
レンズを外して、正面上部(矢印)の小さなつまみを奥へ押し込みます。
押し込んだら、焦点板が保持フレームと一体になってストンと下がって来ます。
ピンセットで焦点板を取り出します。
本体内部はミラーボックスからペンタプリズムまで一体の空間になりました。しっかりブロウしておきます。
これが焦点板です。清掃します。
焦点板を再セットして、ファインダーを覗いて見ました。
ちり、ホコリは無くなりました。下の方のモヤモヤはペンタプリズムの蒸着銅が腐食した部分に相当し、これ以上の改善をするにはペンタプリズムの交換しかありません。
本体修理はここまでで完了しました。 この後は、レンズの清掃に挑戦です。フィルタは表面の蒸着膜が一部はがれていましたで、捨てます。
レンズはうっすらカビている一方で、チリ、ホコリが入り込んでいる様です。
これは前側から見たレンズです。
こちらは後ろ側から見たレンズです。
前側から分解していきます。まず銘板を回します。例によって指サックの出番。
外した銘板と、銘板によって押さえられていた前枠です。
レンズ本体側は前球ユニットのカニ目が見えて来ました。写真中に小さなボールが見えますが、これは絞りダイヤルのクリック用で、無くさない様に注意が必要です。
カニ目に金属ケガキコンパスの先端を差し込んで、ねじります。
ねじります。
ねじります。
ねじります。
しかし、びくともしません。
前球外しはあきらめて、後球外しに挑戦します。
マイナスビスが3本、小さなプラスビスが3本ありますので、これらを外します。
これらのビスを外したら、黒いカバーを外します。
マウントも外します。
レンズ本体は写真の様になり、後球ユニットは指でつかむ事ができる状態になりました。
後球ユニットを指サックで力いっぱいつかんで、思いっきりねじります。。
ねじります。
ねじります。
ねじります。
しかし、後球ユニットはびくともせず、その後ろカバーが緩んで外れてしまいました。
その後も挑戦を続けたのですが、後球ユニットは外れてくれません。
結局レンズの分解はあきらめました。こんなに固いレンズの固定は初めてです。どうやら接着剤でガチガチにしている様です。 未練は残りますが、OM-1システムの修理を終わります。